小宮商店 KOMIYA SHOTEN

「関東縫い」と「関西縫い」

こんにちは。
傘職人見習いの小林です。

ちょっと前ですが、恒例の日経MJのヒット商品番付が出ましたね。
これをあちこちで見聞きするようになると、個人的には「年末だな!」と感じます。
東の横綱は「ラグビーW杯」、西の横綱は「キャッシュレス」だそうです。
ラグビーW杯は多聞にもれずのにわかファンでしたが、我が家は家族そろってだいぶ盛り上がりました。

さて、ヒット商品番付が東西で分かれているのと同様に、傘の「縫い」にも「東」と「西」があるということ、ご存知でしょうか。

何度かご紹介していますが、傘の生地を縫う「中縫い」という工程があります。
「駒」と呼ばれる二等辺三角形に裁断した生地2枚を重ね合わせ、ミシンの針をポツン、と三角形の辺の端に落とし、ズダダダ…と縫い合わせる。 2枚縫い合わせたもの同士を更に縫い合わせて…ということを繰り返しながら丸い生地カバーを作っていくのですが、縫いはじめが三角形の頂点からスタートするのか、底辺からスタートするのか、地域によって制作手法が異なるのです。
頂点から縫う手法が「関東縫い」、底辺から縫う手法が「関西縫い」と呼ばれています。

傘づくり 傘職人 中縫い 小宮商店
洋傘が初めて日本に上陸したのは江戸時代。
文献に残っている記録は長崎が最初のようですが、洋傘というアイテムの認知度がグンと上がったのは黒船来航以降とのこと。
舶来品の洋傘を分解して、「よし、同じものを作ってみよう!」と忠実な再現を試みた…というのが日本での洋傘づくりのスタートだそうです。
この際に使用されていた縫い方が、駒を頂点から縫っていく手法。

そんなわけで、今現在「関東縫い」と呼ばれているこの縫い方は、傘の円の中心となる部分を始点として作られるため、傘のフォルムを綺麗に出しやすいと言われています。

ただ、効率よく作るのが難しいという難点も。
生地の裁断時、包丁を入れるわずかな角度や力加減、また、生地の特性などで、縫い合わせる「駒」の大きさが微妙に異なることがあります。
大きさの異なる「駒」を上からそのままミシンで縫っていくと、当然裾が合いません。
裾がズレたカバーはきれいな円にはならない=売り物にならない、ということで、縫い直しとなります。
中縫いの際にはあらかじめ印をつけたりしつけ縫いをしたり、ということはせず、ミシンに取り付けた専用器具を頼りに、いわゆる「ぶっつけ本番」で縫います。
途中で裾のズレを直そうと生地を引っ張ったりするのは、縫い目に余計なシワを生じさせるので禁物です。
縫いだす前に、都度、裾を合わせ、駒の大きさが揃っているか確認することが必要になってくるため、どうしても時間がかかるのです。

単環縫いミシン 傘 制作
…と「関東縫い」の話だけでだいぶ長くなってしまったので、この辺で一休み。
後半もマニアックな中縫いのお話をお届けします! (^^)

BRANDS
ブランド紹介