小宮商店 KOMIYA SHOTEN

DOOR HANDLE UMBRELLA 特別対談インタビュー
すがたかたち ドアハンドルマイスター・高橋靖史 × 小宮商店製造部・田中一行

小宮商店×すがたかたち 特別対談インタビュー

2022年5月にスタートした「小宮商店×すがたかたち DOOR HANDLE UMBRELLA」。
今回は小宮商店のスタッフが栃木県宇都宮市のすがたかたちショールームにお邪魔し、取材をさせていただきました。
本企画のことはもちろん、ものづくりの「いま」と「ここ」、そしてそこから見える世界と広がる世界について――。 ドアハンドルマイスターの高橋靖史さんと本企画担当小宮商店製造部田中による対談形式でお届けします。

Photo by Orita / Setting by Tagawa


高橋靖史 すがたかたち

「ベテランのバイヤーさんが来ても迎え入れられる空間を心がけました」と高橋さん。 ショールームに流れる特別な時間が、訪れた人をすがたかたちの世界へと誘います。

「小宮商店×すがたかたち」の進行から完成まで

田中 今回は小宮商店とのコラボ企画をお受けいただきありがとうございます。
おかげさまで、お客様からたくさんの反響をいただいています。

高橋 こちらこそ。 傘の手元(持ち手)は初めてでしたが、とても楽しんで取り組めました。過去に、すがたかたちのコートハンガーを鍋の取手に転用するという企画などもありましたが、傘はまったく思いつかなかった。 企画内容をお聞きして、その手があったかと。

田中 ありがたいです。 かねてより面白いものづくりをされている方だなと気になっていましたので、快諾頂いた時は嬉しかったですね。
コロナ禍ということもあり、なかなかお会いできなかったので、今日は実際にお会いしてお話できるのを楽しみにしていました。

高橋 そう言ってもらえると嬉しいです。 田中さんが細かくやり取りをしてくれたので、会えなくても、とてもやりやすかったですよ。 同じ時期にミラノのデザイナーと新しいコレクションに取り組んでいましたがこちらも一度も会うことなく製品にすることができました。 会う会わないは関係なく、始めてしまえばできるものなんですよね。

田中 今回作っていただいた手元を傘に取り付けるとこのような形になります。 ぜひ傘を差してみてください。

高橋靖史 すがたかたち

高橋 これは麻の傘ですか?
自分で作ったものを褒めることは滅多にないのですが、すごくいいですね。

田中 すがたかたちのプロダクトも、小宮商店の傘も、ひとつひとつをよく見ると表情が違う手づくり品なので、ふたつを合わせると、よりしっかりと個性が感じ取れるところが面白いですよね。

手で使われるものを手で作る。
物を通しての「ふれあい」

田中 今回の手元はどのような想いで作られたのですか?

高橋 形を作っていくときは、自由な気持ちで面を切り出していくよう心掛けています。 たとえば手びねりのやきもの茶碗のように、作り手の「手」の跡と使い手の「手」が茶碗を通してふれあい、出会う。 こう使ってほしい、こう感じてほしいというより、手にしっくりくる出会いが本望というか、やりがいです。

田中 使い手のことを考える「ものづくり」は、やりがいに繋がりますよね。

高橋 ものづくりは片思いに似ていると思います。 常に使い手のことを考えて取り組んでいますね。 孤独な作業だけれども、今回の企画のように意外なところから声が掛かることもあります。 このような一期一会の機会を与えられることが素直に嬉しいです。

高橋靖史 すがたかたち

田中 私も日々傘を作る上で、どうしたらもっと形がよくなるか、開けやすくなるか、たたみやすくなるか、などを考えながら取り組んでいます。 作っても作っても、もっといい傘を作りたい、という欲求が出てきて、ゴールがないなと感じています。 これは醍醐味でもありますが(笑)

高橋 そうですね。 満足してもすぐまた課題が見えてくるので、そこに向き合うという繰り返しですが、同時にそれがものづくりの楽しさじゃないですか。 出来の良し悪しをしっかりと振り返りながら、増えていく作品を見るのは楽しい。 だから長く続けられているとも思います。

田中 ものづくりに限らないですが、長く続けることは、とても重要ですよね。

高橋 そうですね、続けることそのものが伝統になるのですから。 とはいえ、自分の仕事が伝統になるにはまだまだ短い。 常々、長い時間をかけて続いてきたからこそできる大きな仕事が伝統工芸だと思っています。 とても羨ましいし、私が一生をかけて取り組んだとしても、幾世代も継いで培ってきた歴史には追いつかない。 伝統工芸のスケールの大きさには本当に憧れます。

高橋靖史 すがたかたち

現代アートの活動を経て
暮らしを豊かにするものづくりへ

田中 高橋さんはアーティストとしてキャリアをスタートされているので、伝統工芸を意識されていることには驚きました。

高橋 若いころは最先端の現代アートに取り組んでいました。 当時は伝統工芸なんて何もわからなかった。 自分の生活はひたすら美の追求のためにありました。
しかし今は、自分や家族、友人やお客様、関わる人にハッピーを届けていくにはどうしたらいいかを考えることが、暮らしを豊かにするものづくりにつながると思っています。 その中で美しさを突き詰めていく。 これをこれからも続けていきたいです。

高橋靖史 すがたかたち

「次回はこの点をもっと改良したいですね」対談中も盛り上がる次回企画に向けてのアイデアのアウトプットは作り手同士ならでは。 尽きることがありません。

田中 今回の企画の手元も、持ちやすさと美しさが考えられた、暮らしを豊かにするプロダクトだと思います。 これからも高橋さんと色々な話をしながら企画を続けていきたいと思っています。

高橋 ドアハンドルと傘の手元が持つ親和性が面白いですよね。 私もぜひやりたいです。 なによりも「売れましたよ」という連絡を頂くととても嬉しいんですよ。 性格がせっかちなんで、お客さんのリアクションを早く知りたい。 一刻も早く製品を前にしたお客さんの声を聴きたいんです。 良いものはやはり、お客さんとのやり取りの中で生まれますから。

田中 私たちもささやかながら自社ショップを構え、直にお客様の声を聴いている販売スタッフから話を聞いていますが、自分自身も傘づくりのワークショップなどで、お客様に接する機会を多く持つよう努めています。

高橋 やはり使い手があっての手仕事です。 私はドアハンドルというメディアでお客さんと関わります。 作った物を通して、どのように人や社会と関わっていくか。 関わるためのメディアがたまたまドアハンドルだったということに過ぎず、すべての仕事や職業とはそういうものだと思います。 それに自分が生み出したもので誰かが幸せになるっていうことは純粋に嬉しいじゃないですか。 是非次回も、そのような可能性をもった取り組みになると良いなと期待しています。


高橋靖史 すがたかたち

(左)すがたかたち・高橋靖史さん、(右)小宮商店・田中一行

コラボレーション企画から普段考えているものづくりに関する事まで、作り手同士ならではの熱い思いが言葉となって交わされた貴重な時間となりました。 高橋さんは奇しくも取材日当日に新しいドアハンドルブランド「aru.」をローンチされ、ものづくりに対する思いと挑戦は留まるところを知りません。 日々の作業を通して蓄積される知識、経験、技術、そして思想。 これらを更に新しい形へと具現化していく姿勢もまた、大きな刺激となりました。 小宮商店とすがたかたちの取り組みはまだまだ始まったばかり、ものづくりの魅力溢れる新しい企画も現在準備中です。 是非ともご期待ください。


高橋靖史

日本で彫刻を学んだ後、フランス政府給費留学生としてパリ国立美術大学留学中にフランス、ベルギーで作品発表を始める。 弱冠34歳でカナダの国立ケベックミュージアムに作品がパーマネントコレクションされて以降、北米各地のギャラリーの他、宇都宮美術館(2004年)、渋川市・桑原巨守彫刻美術館(2008年)などのパブリックミュージアムで個展を開催。 インスタレーション「空間の母型」「レイヤーワーク」の鮮烈な表現が高い評価を受ける。 ニューヨークから帰国後、暮らしと芸術の調和を目指し、2012年にすがたかたち設立。

田中一行

小宮商店製造部所属。 傘の加工と後進の育成に加え、ワークショップイベントやコラボレーション企画なども担当。 職人と商人を掛け合わせた存在「職商人(しょくあきんど)」を目指し、日々精進しています。

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