小宮商店 KOMIYA SHOTEN

2021.04.16傘コラム

明治時代に製造された貴重な洋傘

こんにちは。
先日、小宮商店に3本の新しい洋傘がやってまいりました。
どれも100年以上前につくられたとされる貴重品で、現代の洋傘とは違う雰囲気が漂っています。

今回は、小宮商店の職人がこれらの傘を、傘職人の目線でご紹介させていただきます。

これらは、明治後期に製造されたと思われる国産の日傘です。
経年劣化が激しくこのまま使用することはできない状態ですが、細かなパーツや仕立てなど、あらゆる部分に当時の作り手の思いと新しい発見が息づいています。

洋傘作りが行われるようになって以来、その加工方法はほとんど変わらないといわれていますが、いまでもしっかりと個々の針仕事や縫製が維持されている様子を見ると、変わらないのではなく変えようのない確かさが当時から確立されていたことがわかります。

伝統と革新を求められるものづくりの世界ではありますが、まさに変えてはいけない部分がどこにあるのかを教えてくれているとも言え、気持ちの引き締まる思いとなります。

国内製造・国内販売向けのものでありながらそこここに英語表記が散見され、それまでは一般的に手に入れることが難しかった舶来品の洋傘への憧れを窺い知る事ができます。ヨーロッパから輸入されていた洋傘を、どのように国内製造で実現するか。
その思いに漲る当時の職人たちの情熱は計り知れません。

U字断面の溝入り骨(溝親骨)の製造に日本で初めて成功した河野寅吉氏(1858~1915)の製造による洋傘骨は(K.Hのイニシャルマークより推定)、非常に堅牢な作りとなっており、国内製造がほとんど不可能となった現在から見てもとても贅沢な作りであることがわかります。

骨の中に埋め込まれた卸メーカーのものと思われるプレートデザインは、イギリスの高級老舗洋傘メーカーフォックスアンブレラのトレードマークを彷彿とさせます。

模倣ではなく、純粋な憧れと目指すべき理想を感じ取る事ができ、当時のものづくりの志が世界を視野に入れていたと考えると驚くほかありません。

正絹生地に空いた穴を塞ぐ当て布を施したり、中棒の一部に持ち主の名前を記したりと、使い手の思い入れも存分に感じられます。



どのようなものづくりを目指し、お客様に何を感じて頂くのか。
改めてそのことを意識させてくれた貴重な史料となりました。

こちらは現在小宮商店ショールームにて展示されております。
是非皆さま、一度ご覧にお越しください。

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